介護サービス利用者による暴言・暴力、どう対処?

  • 「介護にあたる職員を怒鳴りつける利用者への対応に困っている」
  • 「利用者に殴られた従業員が仕事を休みがちになっている」
  • 「注意しても職員への暴力を止めない利用者に、施設から出て行ってもらいたい」

こういった暴力やハラスメントのお悩みをお持ちの介護事業者様はいらっしゃいませんか?

介護の現場においては、利用者からの暴言・暴力に悩んでいる従業員の方も多くいらっしゃいますが、従業員から利用者への虐待のケースのように大きな話題にはなっていないように思います。ですが、利用者による暴言・暴力を放置していると、事業者側に思わぬリスクが生じることもございます。

そこで、こちらでは、札幌市近郊で介護事業者への顧問に特化している弁護士が、利用者の暴力・暴言から従業員を守る手段についてご説明いたします。

事業者に課される安全配慮義務

法律上、事業者は、労働者の「生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮」をしなければなりません(労働契約法第5条)。こうした事業者に課される義務を「安全配慮義務」と呼び、これを怠った結果従業員に損害が生じた場合には、事業者がその損害を賠償する責任を負ってしまいます。

すなわち、例えば介護サービスを提供する従業員が利用者の暴言・暴力により怪我をした、あるいはメンタルヘルス不調に陥った、というケースにおいては、事業者が安全配慮義務を尽くしていなかったと認められると、こうした従業員に生じた身体的・精神的損害について事業者が賠償しなければならないことがあるのです。判断能力の低下や精神的疾患を理由に介護サービスを利用されている方もいらっしゃる中で暴言・暴力を全て事前に防ぎきることは出来なくとも、被害に遭った従業員へのケアや被害の拡大防止のために配慮を尽くさなければなりません。

 

介護事業者が取りうる対策

それでは、介護事業者は安全配慮義務を尽くすためにどのような対策を取ればよいのでしょうか。以下では、取りうる対策のいくつかを解説いたします。

事業者としての基本方針の決定・周知

まず、「利用者によるものであっても、暴言・暴力は許さない」といったように、事業所として利用者による暴力・暴言に対する基本的な考え方や対応を決定しましょう。

そして、こうした基本方針についてはただ決定するだけではなく、どの従業員から誰が相談を受けたかに関わらず事業者として同じ対応ができるよう共有するとともに、利用者や家族等にも契約時などに周知することが重要です。

情報の共有体制の構築

実際に暴言・暴力傾向のある利用者がいたときには、その旨を従業員間で共有できるようにすることが重要です。共有事項については、暴言・暴力傾向の有無のみでなく、どのような場面でそういった傾向が表れるかといった点も含めるとよいでしょう。関与するすべての従業員に暴言・暴力の可能性を認識してもらうことで、当該利用者からの暴言・暴力による被害を予防し、また被害を最小限に抑えることにつながります。

対処マニュアルの作成・共有

事前に、かつ定期的に行う対策としては、暴言・暴力への対処マニュアルを作成し、その内容を従業員全員で共有することが挙げられます。共有の方法としては、従業員の採用時はもちろん、研修を継続して行うことが効果的です。

マニュアルには、暴言・暴力が行われそうになった場合の対処方法や、凶器になりそうなものを利用者から遠ざけておくなどの予防策、実際に暴言・暴力が発生した場合に損害を拡大させないための事後的な対処、といった事項を記載しておくとよいでしょう。また実際に暴言・暴力があった際の経過・内容・対応を記録しておき、定期的にマニュアルの内容に反映させていくことも大切です。

身体拘束が認められる場合は限定的

利用者に対して、単に暴力傾向があることだけを理由として身体拘束を行うことは許されません。しかし、実際に暴言・暴力が発生した際には、当該利用者が興奮状態にあるために更なる暴行を行おうとする場合もあり、こうした状況では身体拘束も視野に入るでしょう。

もっとも、身体拘束が例外的に許されるのは、「他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合」に限られます。具体的には、①危険の「切迫性」、②身体拘束以外に方法がないという「非代替性」、③身体拘束が一時的なものにとどまるという「一時性」のすべてが満たされるような極めて限定的な場合とされます。これらの要件を充たしてやむを得ず身体拘束に踏み切った際には、後から「利用者への虐待ではないか」と指摘されることのないよう、経過・状況・結果については必ず記録するようにしましょう。

最終手段としての利用契約解除

暴言・暴力を繰り返す利用者に対し、これ以上の対応が困難だと判断された場合には、利用契約の解除を決断せざるを得ないこともあるでしょう。もっとも、介護サービスを利用している方は介護事業者による支援に依存した状況にある場合が多いため、利用契約の解除は簡単には認められるものではありません。利用者による暴言・暴力を理由とする契約解除についていえば、暴言・暴力の重大性や悪質性、契約期間中の暴言・暴力の回数、事業者側の対応内容、といった要素を考慮して解除に正当な理由があると評価される場合でないと、解除の有効性が認められないおそれがあります。

一方で、事業者側が取れる手段を尽くしたにもかかわらず、今後も従業員や他の利用者に危害を加えてしまう恐れが高い利用者については、契約解除にも正当な理由があると評価されるでしょう。契約解除に踏み切らなければならない場合に備えて、利用契約書には暴言・暴力があった場合に利用契約を解除できる条項を必ず入れておくようにするほか、実際に行われた暴言・暴力に対しては適切な対応を行ってきたことを記録化しておくことが大切です。

 

利用者の暴力・暴言から従業員を守るための「介護顧問」

利用者の暴力・暴言が事業者にもたらすリスク

利用者による暴言・暴力が発生すると、被害者である従業員から事業者への損害賠償請求の可能性が生じることはすでに述べましたが、事業者への影響はそれだけにとどまりません。

まず、暴言・暴力に適切な対応を取らないことは、従業員にとっての就業環境の悪化を招きます。暴言・暴力を受けた従業員の方が一人でつらい気持ちを抱え込んでしまうのではなく、気軽に上司や管理者に相談し、事業所として対応にあたる環境づくりができないと、優秀な人材を失ってしまうおそれがあります。人材不足が叫ばれている介護業界においては、離職者の増加は事業所としての体制維持に支障をきたす問題に発展しかねません。

また、暴言・暴力を放置していると、利用者や場合によってはその家族の態度がどんどん傲慢なものとなり、 悪質なクレームが増加する可能性もあります。そうすると、離職者の増加リスクもますます高まることとなるでしょう。

弁護士法人リブラ共同法律事務所の「介護顧問」

弁護士法人リブラ共同法律事務所では、介護事業者様向けのサービスに特化した「介護顧問」を提供しております。

当事務所の「介護顧問」は、介護業界特有の労務問題や事故・クレーム対策、従業員の方への法的支援(EAP)、ご利用者への法的支援、といったサービスを弁護士が介護施設の顧問としてご提供するものです。利用者による暴力・暴言の対策についても、顧問弁護士による定期的な研修を開催するほか、マニュアルや利用契約書等の事業所内の規定につき必要に応じて予防法務を兼ねたご提案をさせていただくことで、大きなトラブル発生を防ぎ、従業員の定着率アップ、経営効率の向上を図ることが出来ます。

 

介護事業者様向けのサービスに特化した「介護顧問」のサポート費用

利用者の暴力・暴言にお悩みの介護事業者様は、札幌市近郊で経営者側の労務問題に注力している弁護士法人リブラ共同法律事務所へぜひご相談ください。

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