試用期間での解雇が認められるケースとは|解雇判断の注意点とともに解説

試用期間とは、新しく採用した従業員が自社に合っている人材であるかを見極める期間のことです。その性質上、適性が認められないと判断される際には本採用を拒否して解雇を視野に入れる場合も少なくありません。しかし、いくら試用期間といっても解雇をする以上は不当解雇などのトラブルに発展するリスクも存在します。

そこで本記事では、試用期間の解雇が認められやすいケースと、解雇を判断する際の注意点を解説します。

 

試用期間における解雇の特徴

試用期間は解約権留保を付した労働契約に基づいて運用されることが一般的で、通常の労働契約状態とは「雇用者には労働者を解雇する権限が与えられている」ことを労働者側も認識している点で異なるといえます。つまり、試用期間の解雇は通常の解雇に比べて会社の裁量が広く認められやすく、実務上も会社が試用期間を制度化する際には就業規則内で「本採用拒否」という形で特別な解雇権や解雇基準を設けることが多いです。ただし、会社の裁量が広く認められるとはいっても自由に解雇して良いわけではなく、解雇(本採用拒否)の際には社会通念上妥当であると認められる理由がなければなりません。

 

試用期間における解雇が認められる場合

試用期間における解雇が社会通念上妥当だと認められる例は以下の通りです。

 

勤務態度不良

試用期間中の従業員が正当な理由なく遅刻・欠席を繰り返す等、勤務態度不良が認められる時には、解雇が認められる場合が多いです。また、指示に従わない、協調性がないといった業務に支障をきたす問題行為が多発している場合も同様です。企業側からの注意・指導を受けても改善されない場合、これを解雇理由とすることができます。

 

経歴詐称

企業に応募する際に提出する履歴書や職務経歴書などに虚偽の記載をしていた場合、経歴詐称として解雇理由になり得ます。ただし、虚偽の記載部分が、「その事実を知っていれば採用していなかった」といえるような重要な経歴内容であることが必要です。重要な経歴内容とは、業務に関わる資格の有無や職歴、犯罪歴などです。些細な詐称については解雇が認められない可能性があります。

 

病気やケガ

試用期間中に病気やケガで休業し、復職が難しいと判断した場合は解雇を選択することが認められますが、企業としては復職をサポートする措置を可能な限り講じること必要があります。簡単な業務から徐々に復職させるなど、企業としてできるサポートを行なった上で、解雇するかどうかの判断をしなければいけません。

 

試用期間に解雇する場合の注意点

新卒採用者や未経験者は能力不足で解雇できない

新卒採用者や業界未経験者に対して、能力不足を理由に試用期間で解雇してしまうと、不当解雇を訴えられる可能性があります。これは新卒採用者や未経験者が、勤務を始めたばかりの時点で業務処理能力が低いのは当たり前であるという認識に基づくものです。企業側には、新卒採用者や未経験者に対して適切な指導や注意を行なうことで能力を伸ばす責務があります。入社後の研修や指導による成長も見越した判断をする必要があります。

 

解雇までの段階的な対応が求められる

解雇に踏み切るのは最終手段であり、あくまで企業は解雇を避けるための十分な対応を行う必要があります。たとえば、試用期間中の従業員の勤務態度が悪い場合、いきなり解雇をするのではなく、適切な注意・指導を重ねて改善を促すことが重要です。あらゆる手を尽くしても解決に至らない場合に、やむを得ず解雇という選択をすることができます。

 

解雇する場合は解雇予告が必要

従業員を解雇する場合は、試用期間であるかどうかに関わらず、解雇予告を行う必要があります。試用期間開始日から14日以内であれば解雇予告の必要はなく、即時解雇をすることが可能ですが、14日以上経過している場合には解雇の30日以上前の予告が必要です(労働基準法第21条第4号)。

 

まとめ|試用期間の解雇は弁護士にご相談を

試用期間における解雇は通常の解雇よりも会社の裁量が広く認められていますが、自由に解雇を決めていいわけではなく、解雇もやむを得ないと客観的に判断できる理由が必要です。判断や手順を誤れば不当解雇を訴えられるトラブルに繋がりかねないため、試用期間におけるものであっても解雇の際は慎重な判断が欠かせません。

解雇によるトラブルのリスクを減らすためには、弁護士に専門的なアドバイスを受けることを推奨いたします。弊所では、企業人事トラブルの経験が豊富な弁護士がご相談に対応、解雇理由の正当性に関する判断や法的手続きのサポートを受けることが可能です。

試用期間の解雇にお悩みの際はぜひお問い合わせください。