残業代請求を和解で解決したい

従業員から未払の残業代請求を受けた際に、なるべく早期に解決を目指すなら、その従業員との交渉を経て、和解を目指すことになるでしょう。和解の内容としては、一定の解決金を企業から支払うことで未払残業代に関する債権債務関係を清算し、これ以上は争わないと約束するものが一般的です。

ですが、相手によっては後になって「和解は真意ではなかった」「未払い賃金の放棄を会社に強要された」と主張し、和解の効力を争ってくるかもしれません。そこで、こちらでは、札幌市近郊で使用者側の労務問題に特化している弁護士が、残業代請求を和解で解決する場合の注意点についてご説明いたします。

1 和解の効力

(1)民法上の原則

そもそも法律上の和解とは、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約束することをいいます(民法第695条)。そして、紛争の終局的な解決を図る趣旨から、和解がなされると、当事者は和解によりその存否が決定した権利についてそれ以上争うことができなくなります(民法第696条、「和解の確定効」と呼ばれるものです)。

すなわち、法律上、一度和解した内容は、仮にその後に新たな事情が判明したとしても覆されないのが民法上の原則です。

(2)労働法規による制約

しかし、和解の対象が未払残業代を含む賃金債権の場合には、この和解の効力に労働法規上の制約が加えられることがあります。

すなわち、労働基準法では、労働者の経済生活を脅かさないよう保護する観点から、賃金は、その全額を労働者に直接支払わなければならないという賃金全額払いの原則を定めています(労働基準法第24条第1項)。この法の趣旨に鑑みて、判例上も、和解で賃金債権を放棄する場合には、一定の制約が掛けられているのです。

具体的には、従業員が退職の際に「賃金」(労働基準法第11条)のひとつである退職金債権を放棄する書面を会社に提出した事案において、労働者が賃金債権を放棄したと認められるためには、それが労働者の「自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在」するときに限り有効なものとなるとの判断がなされています(シンガー・ソーイング・メシーン事件、最高裁昭和48年1月19日第二小法廷判決)。

未払残業代請求についての和解が「賃金債権の放棄」として上記裁判例と同様に論じられるか否かということについては、明確に回答がなされてはいません。ですが、残業代請求の場面においても、たとえば200万円の未払残業代を請求されている場合に、150万円の解決金を企業が支払う内容で和解した場合には、従業員は残りの50万円分の賃金請求権を放棄していると考えることは可能です。そのため、このような場合には和解が従業員の自由な意思に基づいて行われ、かつそれに合理的な理由があると客観的に認められなければ、後に従業員から和解の有効性を争われるリスクが残るといえるでしょう。

2 和解で解決する際の注意点

未払残業代に関する和解についていかなる法的解釈がとられるかにかかわらず、交渉においては、従業員とのやりとりを客観的に残しておくことが重要です。交渉を尽くした経緯を資料の形にしておくことで、従業員へ訴訟や労働審判によって争いを蒸し返すことを思いとどまらせる効果も見込めますし、仮にこうした法的手段に出られても、残しておいた資料を証拠として提出することで、賃金債権の放棄についての従業員の「自由な意思」が裁判所に認定されやすくなります。たとえば、従業員とのやり取りは口頭ではなくできるだけ書面やメールで行うようにして、やむなく口頭で交渉する際には録音をしておくとよいでしょう。

また、最終的に和解合意書作成に至った際には、互いに譲歩したことを示せるように従業員の主張を盛り込んだ条項を設けるように心がけることが望ましいです。一般的に、従業員より会社(使用者)の方が立場的に強いと見られがちですから、和解にあたっては合意書案の内容・根拠を十分に説明し、従業員側に検討する期間を与えるといった丁寧な対応が必要になってくるでしょう。

3 残業代請求の対応には顧問弁護士を

多くの残業代請求の事案では、訴訟にかかる時間や費用のコストを回避して交渉・和解で解決されます。ですが、対応を誤ると結局あとから争いを蒸し返され、和解の効力が認められないと想定外の支払いを求められる可能性もあります。そのため、交渉にあたっても、労働関連法規や最新の裁判例に通じた弁護士のサポートを受けることをお勧めいたします。

弁護士法人リブラ共同法律事務所では、労務問題に特化した顧問契約をご用意しております。残業代請求への対応については、審判や訴訟はもちろん和解交渉においても、落としどころを見極めた方針の決定、証拠の集め方について助言をさせていただきます。また、再発を防ぐために社内規程等の改善等のご提案をさせていただくことも可能です。

☑「未払残業代の支払いを求める内容証明が届いた」

☑「従業員と話し合うことになったがどこまで譲歩すべきか」

☑「会社で作成した和解書に法的な問題があるか分からない」

といったお悩みがある札幌市近郊の企業様は、経営者側の労務問題に注力している弁護士法人リブラ共同法律事務所へぜひご相談ください。

 

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