団体交渉で議事録を作成する必要性

団体交渉の目的は、使用者と労働組合間で合意を形成することにあります。そのため、通常は1回の交渉で終了するものではなく、複数回の交渉を経ることが一般的で、その過程においては双方から様々な意見が出されることになります。そこで、交渉の内容をその都度議事録を作成して、正確に記録する必要が生じます。

こちらでは、札幌市近郊で使用者側の労務問題に特化している弁護士が、団体交渉において議事録を作成すべき理由と作成方法について説明いたします。

団体交渉で議事録を作成すべき理由

団体交渉において、企業に議事録を作成しなければならない義務はありません。ですが、以下の理由から、議事録は作成するべきです。

まず、すでに述べた通り、交渉は複数回行われるのが通常です。例えば、初回の交渉の場においては労働組合側の団体交渉申入書の記載内容について、具体的主張や根拠の確認のみを行い、企業側の回答を示さないで終わるということもよくあります。そこで、議事録に組合側が要求していることを正確に記録することで、次回の交渉に向けた準備段階において、交渉内容を吟味したうえで効率よく戦略を立てることができるようになります。こうした準備が疎かになり次回の交渉で組合側の主張を踏まえた回答が出来ないと、合意の形成に支障が生じてしまうばかりか、組合側から「誠実に交渉に応じていないのではないか」と不要な反発を招くリスクも生じます。

また、交渉がうまく進まず組合側との対立が激しくなると、不当労働行為救済命令の申立てがなされたり、交渉が決裂し裁判手続きに入ったりすることもあります。その際の証拠としても、議事録を利用することが出来ます。

団体交渉期日におけるメモの作成、録音および録画

団体交渉においては、合意できた事項についてはもちろん、その他の双方の発言内容についてもできる限りメモを取っておく必要があります。そのため、交渉への企業側からの出席者は最低2名以上確保し、1名はメモを取ることに専念できるようにすると良いでしょう。

もっとも、議論が活発に行われると、メモが追い付かず、メモの内容が議事録作成には不十分になってしまうおそれも出てきます。そこで、事前にICレコーダー等を準備して、録音または録画をしておくと確実です。録音・録画を行う際は、団体交渉の冒頭でその旨を一言述べて、ICレコーダー等は隠さず机上に置くようにしましょう。こうすることで、労働組合側に乱暴な言動をさせないための抑止力としての効果も期待できます。

なお、実際は労働組合側でも、録音等をすることは多いです。組合側が一方的に録音等を求めてくることに対し、拒否しても原則として不当労働行為にはあたりませんので、もし拒否したい場合はその旨を交渉の開始前に申し入れるようにしましょう。しかし、録音等は一般的に、団体交渉の目的である合意形成に資する行為です。そのため、拒否する合理的な理由がなければ、極力、組合側の録音等の申出には承諾しておくのが無難な対応です。また、組合側が録音等をしようとすることを理由に交渉自体を拒否してしまうのは、企業側の誠実交渉義務に反する行為と言わざるを得ないでしょう。

 

議事録作成の際の注意点

交渉期日において具体的にどのような議論がなされたか、後日改めて企業側で共有して今後の方針や対応を検討するには、音声や映像データである録音・録画より、議事録として文字で残しておいた方が、より適切であるといえます。そのため、団体交渉当日のメモや録音・録画を参照しながら議事録を作成していきましょう。

議事録の記載内容に特に決まりはありませんが、当該団体交渉期日の

  1. 日時
  2. 出席者
  3. 双方の主な発言内容(発言者)
  4. 合意出来た内容
  5. 次回期日までの準備事項

は記載しておくとよいでしょう。
なお、組合側で作成した議事録に署名を求められることがあります。ですが、企業側が署名してしまうと、内容次第では労働協約としての効力が生じてしまい、企業側もその内容に拘束されてしまうおそれがありますので、安易に応じてはいけません。

団体交渉・労働組合対策には顧問弁護士をご活用ください

労働組合は日常的に労働問題に取り組んでおり、団体交渉のノウハウを有しています。そのため、特に中小企業においては経験の差で劣る企業側が準備や対応を誤ってしまうと、組合側に主導権を握られたままその主張を甘受しなければならなくなるおそれがあります。そこで、団体交渉において企業を守るためには、労働問題を熟知した弁護士の支援を受けることをお勧めいたします。

 弁護士法人リブラ共同法律事務所では、労務問題に特化した顧問契約をご用意しております。労働組合への対応についても、労働協約に関する書類の作成、労働者側との条件調整などを専門的な知見に基づき行ってまいります。また、団体交渉の申出があった際の対応はもちろんのこと、労働組合から団体交渉をされないために、事前に就業規則の整備や労働環境の調整などについてもアドバイスをさせていただきます。

「団体交渉の申入れに対し、どう対応したらよいか」、「労働組合との交渉を繰り返しているが難航しており、いつまで続くか分からない」、…など団体交渉への対応にご不安な点のある札幌市近郊の企業様は、経営者側の労働問題の予防・解決に注力する弁護士法人リブラ共同法律事務所へぜひご相談ください。

 

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