欠勤の多い従業員の解雇や減給は可能?対応におけるポイントを解説
近年、企業経営者から、欠勤が多い従業員の扱いに関して相談される機会が増えています。欠勤が多い従業員は、業務遅延や周囲の負担増加を招き、企業の業績や職場環境に深刻な影響を与えることがあります。そこで本メルマガでは、欠勤が多い従業員に対する適切な対応方法について解説いたします。
1.欠勤が多い従業員による企業への影響
欠勤が多い従業員が在籍していることによる影響は決して小さくはありません。ご想像のつく方も多くいらっしゃると思いますが、改めて、そのような従業員による悪影響を具体的な例を挙げながら見ていきます。
1-1. 生産性の低下
従業員が欠勤すると当然ながら人手不足が生じます。その結果、業務効率が低下し、納期遅延や売上減少に繋がる可能性があります。特に、高度な専門知識やスキルを要する職務の場合、欠員による影響はさらに大きくなります。
1-2. 周囲の負担増加
欠勤者の業務をカバーするため、他の従業員の負担が増加します。これは、残業時間の増加や休日出勤に繋がり、従業員のモチベーション低下や離職に繋がることもあります。また、負担が増加した従業員が体調を崩し、新たな欠勤者を生み出すという悪循環に陥る可能性もあります。
1-3. チームワークの崩壊
頻繁な欠勤は、チーム内の信頼関係を損ね、コミュニケーション不足や不満を引き起こします。「あの人はいつも休んでいてズルい」、「自分だけ頑張っている」といった不満が募り、チームワークが崩壊してしまうことにも繋がりかねません。
1-4. 外部からの企業イメージの低下
社内だけではなく、社外における悪影響も発生する可能性は大いにあります。特に顧客や取引先への連絡や対応の遅延は企業の信頼を損ない、契約打ち切りや業績低下に直結しやすいため、十分注意する必要があります。
2,欠勤が多い従業員への適切な対応方法
実際に特定の従業員の欠勤が増えていたら、企業はどのように対応すれば良いのでしょうか。ここでは、具体的な対応方法を手順ごとに解説していきます。
2-1. 状況把握
まずは、欠勤が多い従業員の状況を把握することが重要です。欠勤頻度や期間、連絡状況、欠勤理由(家庭事情、病気、ケガなど)を詳細に確認します。また、普段の勤務態度や業績も把握しておきましょう。
2-2. 面談による注意指導・改善勧告
状況を把握した後は欠勤が多い従業員と面談を行い、状況のすり合わせと、指導・改善勧告を行いましょう。その際は、具体的な事実を伝えるようにして改善を促すようにします。面談や口頭での指導後に改善が見られない場合は、書面にて正式な注意指導を行い、始末書の提出を命じて、記録として残すようにします。
2-3. 処分の検討
書面による注意指導、始末書が提出された後も改善が見られない場合は、状況に応じて休職や懲戒処分などの措置を検討する必要があります。懲戒処分の種類には、譴責、減給、出勤停止、降格、解雇などがありますが、基本的には軽い処分から実施していき、最終的に最も重い処分の解雇を実施することになります。事案に応じて適切な処分を行う必要がある点には十分注意し、不当解雇であるとして訴えられないような対応をとるようにしましょう。
3.欠勤が多い従業員を解雇・減給できるか
前述の通り、「欠勤が多い社員を今すぐ解雇する」、「翌月から給料を減らす」といった処分をいきなり下すことは、不当な処分であるとされる可能性が高く、慎重に行う必要があります。ここでは減給、解雇の要件を簡潔にお伝えします。
3-1. 減給の要件
減給は労働者の賃金を減額する処分であり、解雇と同様に厳格な要件が求められます。減給を行うためには、就業規則に減給に関する規定があり、その規定に基づいて慎重に行う必要があります。また、一回の減給額は労働基準法第91条に基づき、以下の要件を満たす必要があります。
・平均賃金の1日分の半額を超えないこと
・総額は一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えないこと
したがって、欠勤を理由とする減給を行う場合は、就業規則に欠勤による減給に関する規定があること、減給額が法律の範囲内であることなどを確認する必要があります。
3-2. 解雇の要件
欠勤の多さを理由として解雇する場合は、普通解雇と懲戒解雇のどちらかが考えられますが、これらの解雇が有効となるためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
1.客観的に合理的な理由があること
2.社会通念上相当であること
3.企業が解雇回避努力義務を果たしていること
4.手続きが適正であること
欠勤を理由とする解雇の場合、欠勤が長期間にわたり、業務に重大な支障をきたしていること、改善の見込みがないことなどが「客観的に合理的な理由」として認められる可能性があります。しかし、病気やケガなどのやむを得ない理由による欠勤の場合は、解雇が認められない可能性があります。また、懲戒解雇は普通解雇よりも重い処分であるため、解雇が適切であるのか否かということは、より厳しい基準で判断されることになります。そのため、まずは普通解雇を検討することを推奨いたします。
4.欠勤の多い従業員にお悩みの方は当事務所にご相談ください
欠勤が多い従業員への対応は、適切な手順・方法をとる必要があり、誤った対応をしてしまうと、従業員から訴えられるリスクがあります。また、減給や解雇等の懲戒処分を行う際には、就業規則に適切な規定が含まれている必要があるため、予め就業規則のチェックをすることも必要です。当事務所は、企業法務に関する案件を多数取り扱っており、企業の実状に即したアドバイスをすることが可能です。欠勤が多いような、問題社員への対応に関してお悩みの場合は、お気軽に当事務所へご相談ください。