飲食業

飲食業は閉店時間が深夜に及ぶことから、業務時間が長時間となり残業が発生しやすい職種です。残業代は過去2年間分を請求できることから(令和2年4月1日から過去3年間に延長されました)、請求金額が300万円から400万円になることもあります。
  
一般的に、大卒の初任給が20万店程度の企業が多い中で、飲食店では25万円程度の条件を提示するところもあります。また、店長候補については30万円以上とするところもあります。このような一見すると高額そうな給与も、基本給だけではなく残業代を含んだ金額とされ、飲食店としては基本給を示したのではなく、固定残業代制度を取り入れていることが多くあります。
  
固定残業代制度は予め毎月支払う給与のうち、基本給に加え残業代に相当する手当を支払うものですが、法律上固定残業代制度が有効とされるためには、①基本給と割増賃金に代わる手当てが明確に区分されていること、②就業規則や労働契約に手当てが何時間分の割増賃金に該当するか明記されていること、③手当よりも残業代が超過した場合に不足額を支払うなど手当と残業代を区別した運用がなされていることなどが必要です。そのため、固定残業代制度を導入したとしても、上記の要件を充たさないためにと紛争となった際に固定残業代制度と認められず、固定残業代が基本給の一部に入れられ、会社の想定する基本給よりも高額の基本給を前提に割増賃金を計算することになってしまいます。
  
また、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には、労基法の労働時間・休憩・休日の規制が適用されない(労基法41条2号)ことから、飲食店では店長が管理監督者に当たるとして、店長に残業代を支払わないことがあります。しかしながら、日本マクドナルド事件(東京地判平成20年1月28日)では、アルバイト従業員の採用や育成、勤務シフトの決定等を行い店舗運営において重要な職責を負うとしながら、店長の職務、権限は店舗内の事項に限られ重要な職務と権限を付与されておらず、労働時間に関する自由裁量があったとは認められず、賃金が管理監督者に対する待遇として十分であるといえないとして、管理監督者とは認められないと判断されました。そのため、このような判決に照らすと、ファミリーレストラン、ファーストフード店、居酒屋等の多くの飲食店の店長は管理監督者と認められないこととなり、残業代の支払いが必要となるので、店長が退職後に残業代を請求した場合は高額の残業代の支払いが必要となることがあります。