団体交渉の進め方のポイントとは?
労働組合からの団体交渉の申し入れに対し、何に注意すべきか悩む企業担当者は決して少なくありません。不用意な発言は自社の利益を損ない、法的トラブルを招く可能性があります。そのため、団体交渉の流れや注意点を理解することが重要です。
そこで本メルマガでは、団体交渉における準備や交渉当日の注意点、交渉が決裂した際の対策について解説します。
1.団体交渉とは?
団体交渉とは、労働者が集団(労働組合)で労働条件や職場環境の改善を目的に使用者(企業)と交渉することを指します。労働者が団体交渉を行う権利は憲法および労働組合法でも保障されており、労働組合から団体交渉を申し込まれた場合、企業側は正当な理由なく拒むことはできません。
2.団体交渉の申出への対応や交渉の準備をする際のポイント
- 労働組合からの交渉申し入れを確認する
労働組合から交渉の申し入れがあった場合、以下の点を確認しましょう。
・労働組合の所在や態様(企業内の組合なのか、産業別の組合や合同労組なのか等)
・労働組合に加入した従業員(業種や雇用形態等)
・要求書で求められている内容
組合からの通知が届いた際に慌てて誤った行動をすると、余計な混乱や不利な状況を招きかねません。まずは書面の内容をしっかりと把握し、今後の対応を考えましょう。
- 団体交渉における議題の整理と優先順位を設定する
団体交渉の要求書で求められている内容を確認したら、議題の整理と交渉すべき優先順位の設定を進めます。労働組合からの要求には、組合員との間だけで解決する問題から、他の従業員に波及するような問題まで、多岐に渡ります。企業として効果的な交渉となるように、まずは情報の整理を行いましょう。
- 交渉事項の事実関係を確認する
団体交渉で要求される事項について、事実関係を確かめる必要がある場合は迅速に調査を行います。たとえば、ハラスメント被害や時間外労働の改善を求める主張の場合、企業としても職場の実態を把握しておくことは重要です。
- 必要な書類やデータを準備する
団体交渉の事前準備として、主張をする際に必要な書類やデータを揃える必要があります。要求内容を確認した上で、就業規則や労働契約書といった参考書類や、調査データや報告書などの関連する情報をできる限り集めることが重要です。
- 想定問答を用意する
労働組合からの要求事項から、交渉当日に組合からされる主張や質問を想定し、解答案を準備しておきましょう。あらかじめ方針を定めておくことで回答のブレがなくなり、組合の主張に押されて不利になる発言をせずに済みます。
3.団体交渉において企業側が注意すべき点
- 組合側の要求は慎重に検討する
組合側の要求を無下にする言動は、労働組合法で禁止されている不当労働行為に該当しかねません。企業は、組合側の要求に対して誠実に対応する義務があります。もし反論をする場合でも、資料を提示しながら丁寧に説明するようにしましょう。
- 事前許可を得たうえで録音する
団体交渉当日の内容は、記録を残しておくために録音をすることを推奨いたします。ただし、余計なトラブルを避けるために、録音をする際は必ず事前に許可を得ておきましょう。
- 交渉権限を持つ社員が必ず出席する
団体交渉には、労働条件などについて決定できる権限を、社長や代表者と同じくらい有する人が出席しなければなりません。「社長に聞かなければ、ここで答えることはできない」といった回答をすることは、不誠実な態度で不当労働行為を問われる可能性があります。
4.団体交渉が決裂した際の対策
- 労働委員会への不当労働行為の審査申立て
団体交渉がうまく進まなかった場合、労働組合または労働者個人が、労働委員会に不当労働行為の審査申立てをする可能性があります。調査手続きが開始された場合は、誠実な対応が求められます。
- 労働委員会の個別労働紛争のあっせん手続き
団体交渉が決裂した場合、第三者である労働問題の専門家に仲介してもらい、紛争解決を図るという選択肢があります。あっせん案が提示された場合は、期日までの対策を講じて参加する必要があります。
- 労働基準監督署への申告
団体交渉が決裂した場合、労働者側が労働基準監督署に申告する可能性があります。労基署への通報があれば、監督官による調査が行われ、指導や是正勧告といった行政処分への対応が必要です。
- 労働審判の申し立て・労働裁判の訴訟提起
団体交渉で話がまとまらない場合、労働審判を申し立てられたり、労働裁判の訴訟を起こされたりするケースがあります。反論の検討や証拠書類の準備などを迅速に進めなければなりません。
5.まとめ:団体交渉に関することでお悩みの場合は弊所までご相談ください
団体交渉の申し入れがあった際は、要求内容を整理し、誠実かつ適切に対応することが重要です。したがって、団体交渉を行う場合は労務トラブルに精通している弁護士に相談することを推奨いたします。弁護士に相談をすることで、労働組合の権利を侵害することなく、自社の利益を確保する最適な交渉を進めることが可能です。団体交渉に同席することもできるため、実際の交渉の場で専門家の意見を仰ぎながら話し合いを進められる点も大きなメリットといえます。
当事務所では、企業法務の経験と実績な豊富な弁護士が、団体交渉の準備や交渉、紛争トラブルに至るまで徹底サポートいたします。団体交渉に関するお悩みはぜひ一度ご相談ください。