整理解雇を行う際の注意点
☑整理解雇とは何ですか?
☑整理解雇を行う際の注意点は?
☑辞めさせたい従業員に対して、どのように手続を進めていくべきか?
このようなお悩みをお持ちの企業・法人様はいらっしゃいませんか?
昨今は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、企業をめぐる状況は大きく変化しています。中には経営状況の悪化を免れず、やむを得ず事業の縮小、そして人員の整理に踏み切る企業もあり、厚生労働省は、2021年2月26日時点で新型コロナウイルスの影響による解雇・雇止め(見込みを含む)の人数が、累計で9万人を超えたことを明らかにしています。
解雇のうち、使用者の経営上の理由で人員削減を目的に行う解雇を「整理解雇」といいます。整理解雇は、労働者に落ち度がないにもかかわらず経済生活の基盤を奪う行為であることから、その法的な有効性は厳しく判断されることになります。
そこで、こちらでは、札幌市近郊で使用者側の労務問題に特化している弁護士が、法的に有効な整理解雇を進めるための注意点についてご説明いたします。
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Contents
1 整理解雇の有効性
整理解雇を含む「解雇」は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、その権利を濫用したものとして無効とされてしまいます(労働契約法第16条)。
すなわち、解雇が法的に有効かどうかは、その合理性および相当性の有無から判断されるのですが、その中でも整理解雇のケースでは裁判例が蓄積しており、より具体的に、以下の4つの要件で法的な有効性を判断するという枠組みが確立されています。なお、これらは「要件」と呼ばれていますが、近年の裁判例は全てを満たすことを求めているというよりは、解雇の合理性および相当性の判断のための4つの「要素」としてこれらを総合考慮している傾向にあります。
(1)人員削減の必要性
まず、整理解雇にあたっては、人員削減の必要性がなくてはなりません。
そこで、企業の立場では、例えば債務超過や赤字累積に陥っているという事実を、客観的なデータに基づいて説明できることが求められます。その反面、整理解雇を実施した後で残った従業員の給与を引き上げた、多数の新規採用を行った、といった事実があると、人員削減とは矛盾する行為として、その必要性を否定する方向に考慮されてしまいます。
(2)解雇回避努力
会社が経営上の危機に瀕しているといっても、それをもって直ちに整理解雇をしてはいけません。整理解雇に踏み切るには、その前に経営上の努力を尽くしたことが求められます。例えば、役員報酬の削減、配置転換・出向、希望退職者の募集、新規・中途採用の中止、といった措置が取られていたかどうかといった点が厳しく確認され、整理解雇が最終手段としてなされたことが認められなければなりません。
また、新型コロナウイルスの影響を受けて経営状況が悪化したケースでは、政府から雇用調整助成金を受けることも考えられます。雇用調整助成金とは、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されるもので、新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例適用にあたり、助成の上限額、助成率、支給限度日数(緊急対応期間中に休業を実施した場合)が引き上げられています。この受給の有無が整理解雇の有効性にどう影響するか判断を示した裁判例は未だありませんが、助成金制度が雇用維持のために用意された支援制度である以上、助成金を活用して雇用維持を図ることも会社が尽くすべき解雇回避努力の一つと評価される可能性はあるでしょう。
(3)解雇対象者選定の合理性
整理解雇が必要だとしても、その対象者は合理的な選定基準により公正に選ばれる必要があります。
用いられるべき選定基準の例は、
- 勤務態度(欠勤・遅刻回数、懲戒処分の有無 等)
- 非違行為の有無
- 勤続年数
- 扶養家族の有無
- 職種、勤務地
- 年齢
といった客観的に評価可能なものが挙げられます。これらのうち一つないし複数を組み合わせたうえで、どの基準を重視し、どのような順序で当てはめたかを説明できなくてはいけません。なお、能力や成績を基準とすることも考えられますが、主観的な評価が混じるものは避けた方が望ましいでしょう。
(4)手続の妥当性
整理解雇が有効といえるためには、その具体的な進行段階においても、十分な説明や協議がなされていることが求められます。
労働協約や就業規則において、解雇にあたって労働組合又は労働者にとの協議を会社に義務付ける条項がある場合はもちろん、そうでなくとも、使用者には信義則上、整理解雇の実施やその理由について説明し、納得を得るための誠意をもった協議を行うことが求められます。必ずしも労働者側から「納得が得られた」ことが求められているわけではなく、企業側が「誠意を尽くした」か否かが重視されることになります。また、説明の際に用いた資料や議事録など、客観的証拠となるものを残しておくことも重要です。
以上が整理解雇の有効性を判断するための要件ですが、これらを充足するか否かの具体的な判断は、個別の事案や会社の規模・事業内容等によって異なります。例えば、小規模の企業では解雇回避のために配置転換をすることは困難であることが多いと考えられますし、雇用調整助成金の受給についても、先に休業手当等を従業員に支払ってからの申請となることに加え、手続にも数か月程度を要するため、2~3か月間の休業手当相当額の支払いをするだけの資金繰りの目途すらつかない場合にまでも画一的に求められるものとまではいえないでしょう。
そのため、実際に整理解雇を実施する場合の手順や方法についても当然、企業ごとに違ってくることになります。
2 整理解雇の実施と顧問弁護士のご活用
新型コロナウイルスの影響で経営状況の悪化した企業にとっても、整理解雇は倒産を回避するための最終手段といえますが、その手順や方法を誤ってしまうと、かえって会社経営にとどめを刺されかねないほどの重大なリスクをもたらす行為となってしまいます。
というのも、解雇が無効となったときは、従業員は解雇期間中の賃金を会社に請求することができます(民法第536条2項)。しかも、解雇を巡る紛争は長期化することが多く、裁判になると結論が出るまでに年単位の時間がかかることあります。さらに、整理解雇の対象者は通常一人だけではありませんから、複数の対象者が同時に解雇の効力を争ってくるケースや、はじめは一人との紛争でも複数の対象者に問題が波及していくケースも予想されます。したがって、整理解雇が無効と判断された結果、会社が数千万円単位の支払いを求められることもあるのです。
ですから、整理解雇を行うにあたっては、労務問題を熟知した弁護士のサポートのもと、それぞれの企業の事情を踏まえた計画を立てることが重要です。
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、労務問題に特化した顧問契約をご用意しております。整理解雇にあたっては計画の策定、従業員との面談への同席といったご対応をさせていただきます。また、解雇無効を争われた際も、企業の代理人として審判や訴訟への対応を行い、解決を図ってまいります。
人員整理を検討している札幌市近郊の企業様は、経営者側の労務問題に注力している弁護士法人リブラ共同法律事務所へぜひご相談ください。
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