未払残業代を放置することで企業が負うリスク

未払残業代を放置することで企業が負うリスク

  • 「未払残業代の支払いを求められたときの対応は法律で定められているのか」
  • 「未払残業代を放置していると会社は何か罰を受けるのだろうか」

…こういったお悩みをお持ちの企業・法人様はいらっしゃいませんか?

労働基準法は、立場の弱い労働者を保護する目的で、一般的な私人間の契約関係を規律する民法を修正して労働条件の最低基準を定める法律です。そのため、主に使用者側が守るべきこと、および守らなかった使用者に対して取られる措置がこの法律に規定されています。
そこで、こちらでは労使間のトラブルでも特に多い残業代請求の事案において、適切に対応しない企業に対し労働基準法がどのような規定をおいているか、という点について札幌市近郊で使用者側の労務問題に特化している弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が解説いたします。

残業代の未払に対する罰則

労働基準法上の「賃金」には、「時間外、休日及び深夜の割増賃金」(労働基準法第37条)、いわゆる残業代も含まれます。この残業代の未払に対しては、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という使用者への罰則が規定されています(同第119条第1号)。
ここでいう「使用者」とは「事業者又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」を指します(同第10条)。そのため、「事業者」として取締役、社長といった地位にある方はもちろん、各事業について業務上の命令を出したり、従業員の指揮監督をしたりする立場であれば部長、課長といった肩書の方も罰則の対象となりえます。

ですが、事業者でない使用者が違反行為をする場合、その違反行為は「会社のためになされた」「会社ぐるみで行われていた」というケースが多いです。そこで、このような場合は事業主も使用者と同じ罰金刑を課す旨が定められています(懲役刑は対象となりません。このような、行為者本人と事業主の両方に罰則を科す規定を「両罰規定」と呼びます)。ただし、事業主が違反の防止に必要な措置をとっていれば、「会社ぐるみでの違反」とはいえませんから、この規定は適用されません(同第212条第1項、いわゆる過失責任といわれるものです)。

訴訟では付加金の支払いが命じられることも

労働基準法は、残業代の未払があった使用者に対する制裁の趣旨で、「付加金」について定めています。付加金とは、労働者が未払残業代とあわせて請求し、裁判所が判決により使用者に命じるものです(労働基準法第114条。判決以外の、任意の交渉や訴訟上の和解の際には付加金の支払義務は生じないと解されています)。

付加金の額は条文上は未払残業代と「同一額」と規定されていますが、裁判所は使用者側の違反の程度や、労働者側が被った不利益の程度など個別具体的な事情を考慮して付加金の額を決めますので、実際のところは「未払額と同一額を上限に」支払いが命じられるものといえます。

遅延損害金(遅延利息)にも注意!

残業代が決められた支払期日(給料日)に支払わなければ、その翌日を起算日として遅延損害金(遅延利息)も発生します。これは一般法である民法の規定のもと労働者が使用者の債務不履行により負った損害を賠償する趣旨のもので、残業代請求の際にあわせて支払いを求められます。

遅延損害金(遅延利息)の利率は、当該従業員の在職中は2020年4月に施行された改正民法の法定利率により年3%ですが、退職以降も支払いがなければ「賃金の支払の確保等に関する法律」が適用され年14.6%となります。上述の民法改正に合わせて賃金債権の消滅時効期間が延長された影響もあり、長期間の残業代未払があったケースでは遅延損害金も増えてしまいます。

残業代請求の対応には顧問弁護士を

(1)未払残業代を放置することの影響

労働基準法の順守は使用者の義務であり、違反して残業代の未払を放置していると多額の支払いを求められたり、企業側に罰則が科されたりする可能性があります。
たしかに、残業代の未払が多額である、是正勧告に従わない…などの悪質性があるようなケースで無ければ、いきなり刑罰を受けるようなことはありません。ですが、労働基準監督署の調査(労働基準法第101条)が入ったり、是正勧告を受けたりした時点で「あの会社は法律違反を犯している」「従業員を大切にしないブラック企業だ」という評判が広まり、取引先からの信用を損ねたり、従業員の退職につながってしまう事態に陥るおそれは十分にございます。それどころか、退職した従業員がSNS等に残業代の未払のことを書き込むなどして拡散されると、採用活動への悪影響や、在職中の従業員のモチベーション低下にもつながってしまいます。
また、残業代を請求される場合、多くのケースで残業代の不払いが生じているのは従業員の一人に限られず、複数の従業員に対して不払いが生じています。そのため、はじめは一人の従業員との間で揉めていたとしても、当該従業員と同様の待遇の従業員に波及してまとめて請求を受けることで、経営に影響しかねない多額の支払いに応じなければならなくなるおそれもあります。

(2)弁護士法人リブラ共同法律事務所の顧問契約

上記の問題を避けるため、労務管理には関連法規や最新の裁判例を理解しておくことが不可欠ですが、近年の関連法規の改正が続いている中では「現行の社内制度を見直すことにリソースを割けない」、「法律の知識を持った社員がいない」といったご心配もあるかと思います。そこで、労務管理においては法律の専門家である弁護士のサポートを継続的に受けることをお勧めいたします。
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、労務問題に特化した顧問契約をご用意しております。残業代をめぐるトラブル予防のため、現状の雇用契約書および就業規則等の問題点の洗い出しや改善のためのアドバイスをさせていただきます。また、残業代を請求された場合には、企業の代理人として対応いたします。
残業代請求対応にお悩みのある札幌市近郊の企業様は、経営者側の労務問題に注力している弁護士法人リブラ共同法律事務所へぜひご相談ください。

 

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