労基署調査への対応方法とは?調査の流れや調査対象の条件を解説
労働基準監督署(以下、労基署)とは、企業が労働基準関係の法令を守っているかどうかをチェックし、労働者の労働条件や労働環境を確保・改善する厚生労働省の機関です。労基署は、同署が定めた監督計画や従業員からの通報に基づいて事業場へ立ち入り、書類の提出や尋問および調査を行う権限を持っています。このような労基署の調査が入った際に、企業側が誤った対応をすると最悪の場合送検・起訴をされてしまい、罰金や懲役刑を受けてしまうことがあります。そこで今回は、労基署の調査の流れや対応時のポイントを解説させていただきます。
労基署の調査の流れ
労基署による調査の流れは、大きな流れとして下記となります。
1.予告または来訪
2.立入調査
3.文書による指導
4.会社による是正・改善報告
5.再監督
6.調査・指導の終了もしくは送検
労基署の調査は、電話や書面で予告される場合と、予告されずに来訪して調査が行われる場合があります。労基署が書類の改ざんや破棄が行われるリスクがあると判断した場合は、抜き打ち調査となることが多いため、日常的に労働基準関係の法令を遵守した管理体制がとられていなければなりません。
そして、実際に調査が行われた後に法令違反が発覚した場合は、会社に是正勧告指示が出されます。また、法令違反はしていないものの、改善が望ましいと認められる事項についても指導票が交付されます。
これらの是正勧告書や指導票といった文書の指導を受けた場合は、指定された期日までに「是正報告書」の提出が必要となります。
労基署の調査対象
労基署の調査対象となる内容は、労働基準法などの労働関係の法令で定められた事項です。労働条件の最低基準が遵守されているかどうかがチェック対象となります。
【チェック対象の例】
・労働条件(就業規則、労働契約書)
・労働時間(36協定の締結、時間外労働の実態)
・賃金(最低賃金の確保、残業代の計算)
・年次有給休暇(有給の取得状況)
・安全衛生管理(安全衛生委員会の設置、長時間労働者への指導)
・健康管理(健康診断の実施)
チェックされる対象は労働基準法で定められている事項ですので、法令を遵守した経営体制を構築することができていれば、予告が無い状態で調査に入られたとしても基本的には問題ありません。現在の労務体制に法的リスクを抱えている場合は、調査が入るまで改善を放置するのではなく、自主的に改善を図ることを推奨いたします。
労基署の調査時の対応方法
①必要書類の準備
立ち入り調査にあたっては、労基署から会社側で用意してほしい資料を指示されることがあります。指示された書類の準備が不十分であると、労基署としては記載ミスレベルであるのか、事実を隠ぺいしようとしているのか判断することができないため更なる追及を受けることになります。予告がある場合は必ず当日までに準備することを心がけてください。
労基署から提出を求められることが多い書類には、以下のようなものがあげられます。
・就業規則
・労働者名簿
・雇用契約書
・賃金台帳
・36協定書
・タイムカードや出勤簿
・健康診断個人票
労基署の調査が入るからということで、資料の改ざん等を行うことは厳禁です。提出を指示された資料の中で、用意することができないものは作成していない旨を伝える必要があります。例え、作成していないことが法令違反になるものであっても、正直に申し出ましょう。
②調査依頼や是正勧告に従う
労基署から調査の通達や是正勧告を受けた場合は、素直に従いましょう。正当な理由なく立入調査を拒否したり呼び出しを無視したりすると、企業は法令上の罰則を受ける可能性がありますので、注意が必要です。
是正勧告は行政指導のひとつであるため強制力はないものの、指摘事項の改善と是正報告書を期日までに提出しなければ、最悪の場合書類送検となる可能性があるため、速やかに対処する必要があります。
③弁護士に調査の立会いを依頼する
労基署の調査がある際は、弁護士による同席も1つの有効な手段です。指摘事項に反論したいことがある場合に、弁護士から法的な観点で正確な主張を述べることができます。
また、調査の段階から弁護士に同席をしてもらうことで、指摘されたことを改善する際に、専門的な知見をもとにアドバイスを受けることができます。是正報告書の作成にあたってもサポートが可能です。
労基署の対応では、指摘事項を正しく改善し、将来にわたっても違反しない体制をつくることが重要です。調査への準備や制度の是正を行うならば、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。
おわりに
リブラ共同法律事務所では、労働問題に関する対応実績が豊富にございますので、労基署対応について不安をお持ちの企業様や調査への対応でお困りの企業様はお気軽にご相談ください。
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