【企業労務顧問】定年廃止のメリット・デメリット、会社はどう変わる?

弁護士が解説!定年廃止で会社はどう変わる?メリット・デメリットを解説

「定年廃止のメリット・デメリットを知りたい」

「人手が足りないので、従業員には元気なうちは年齢に関係なく働いて欲しい」

「定年廃止は必ずしなければならないのだろうか」

「高年齢者の雇用にあたり、どんな点を検討しなければならないか」

「定年後にも仕事を続けてもらうためにどのような制度を作っていけばよいか」

こういったご希望、あるいは疑問をお持ちの企業・法人様はいらっしゃいませんか?

少子高齢化が急速に進んでいる中、生産性を維持するためには熟練人材の活用が欠かせません。国も働く意欲のある高年齢者が活躍できるよう法整備を進めており、「定年の廃止」も、そのような流れで企業に求められる雇用確保措置の一つです。

こちらでは、札幌市近郊で労務問題に注力する弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が、現在の法規制の内容と定年廃止のメリット・デメリットについてご説明いたします。

「定年廃止」は選択肢のひとつ~高年齢者雇用安定法に定める雇用確保措置

現行法においては「定年は必ず廃止しなければならない」というわけではなく、正確には以下のように、いくつか定められている措置のいずれかをとるよう義務付けられています。

(1)事業主が講じなければならない選択的措置

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(通称:高年齢者雇用安定法。以下、「高年法」とよびます)においては、事業主には次のいずれかの雇用確保措置をとることが義務づけられています(高年法第9条第1項)。

① 定年の引上げ
② 継続雇用制度の導入
③ 定年の定めの廃止

②継続雇用制度として具体的にとられるものとして、具体的に対象となる労働者が定年を迎えても退職させずそのまま雇用する勤務延長制度や、対象者が定年(60歳以上)を迎えた段階で一旦退職扱いとした後で再び雇用する再雇用制度が一般的です。特に再雇用制度については、再雇用時に嘱託社員や契約社員などへの雇用形態の変更や勤務条件の見直しといったことが可能であることから、高年齢者の適格性や心身の健康状態を定期的に把握して柔軟に人材活用ができる点から多くの企業で活用されています。

なお、①~③ののいずれの措置も取らない事業主に対しては、厚生労働大臣の指導助言や勧告がなされ、従わないときには企業名が公表されるおそれがあります(高年法第10条)。

(2)2021(令和3)年施行・改正高年法に基づく努力義務

上記に加え、事業主にはさらに65歳から70歳までの労働者についての就業確保措置をとる努力義務が規定されています。

具体的には、事業者は以下のいずれかの措置をとるよう努める必要があります(高年法第10条の2)。あくまで努力義務であるため、違反した事業主への制裁は規定されていません。

① 70歳までの定年引き上げ

② 70歳までの継続雇用制度の導入

③ 定年制の廃止

④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業

なお、④と⑤は「雇用」ではなく社外での就労機会確保措置といえることから、労働者の過半数で組織する労働組合等の同意を得たうえで導入しなければなりません。

「定年廃止」のメリット・デメリット

定年廃止に踏み切ることで企業が得られるメリットおよびデメリットとして、以下のものが考えられます。

(1)メリット

①当該従業員の知識やネットワークを活かすことができる

定年が廃止されれば、長年会社に貢献してくれた優秀な人材を手放す必要がなくなり、長く勤めてきた人材ならではのノウハウや経験、顧客とのつながりを継続して活用できることは大きな魅力です。

②人材採用・教育コストを削減できる

定年退職者がいなくなれば、新たに求人・採用をするためのコストや手間を省くことが出来ます。また、採用の機会が減らせると若手への教育コストも抑えることが可能です。この教育コスト削減の面では、長期にわたり勤務している年長者だからこそ若手のバックアップ・助言役という新たなポジションに回ってもらうといった熟練人材の活用方法も考えられるでしょう。

③助成金を受け取ることができる

例えば、厚生労働省の所管する高齢・障害・求職者雇用支援機構は、定年引上げ等や高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約を無期雇用に転換した事業主に対する「65歳超雇用促進助成金」の支給を継続的に行っており、定年廃止の場合は60歳以上の雇用保険被保険者数に応じて40万円~160万円(令和4年度の助成額)の助成金を受給できます。こうした行政による助成を受けられることも、メリットの一つといえるでしょう。

(2)デメリット

①パフォーマンスの落ちた人材が会社に残ってしまう

定年という退職の大きなきっかけの一つがなくなれば、年齢に関係なく仕事を続けたいという方もいるかと思います。

ですが、経営者視点ではずっと働き続けて欲しい人材ばかりとはいえないのが現実でしょう。加齢に伴い健康上の問題が生じたり、集中力や判断力が低下したりと、これまで通りの業務遂行が難しくなる方も出てくる中でただ高年齢者を会社に留めておくだけだと、ゆくゆくは会社経営に影響するおそれもあります。

そこで、対象となる従業員一人一人について労働時間や業務内容の変更などの配慮が必要かどうか、本人とも話し合って判断することが大切です。

②人件費が増加する

年功序列制をベースにしたまま定年廃止をしてしまうと、高齢の社員に多くの賃金が支払われ続け、経営を圧迫してしまいます。また、給与の安い若年層が会社を離れてしまうおそれもあります。

そのため、定年廃止の際は同時に昇進システムや賃金制度の見直しも必要になります。「一定の年齢で役職から外す」「業務内容の変更に伴う減給(昇給)」「成果報酬制を導入する」など、各年齢層の従業員の意見も取り入れて慎重に検討しなくてはなりません。

③若手従業員のモチベーションや定着率の低下

定年による退職がなくなれば社内に占める高年齢者の割合が増え、同時に新卒の採用枠が少なくなることが考えられます。すると、「世代交代が進まない」、「新しい技術や考え方が浸透しづらい」、といった理由で若手の士気が下がり、最悪の場合離職してしまうケースが想定されます。

また、高年齢者の体力面や健康面を考慮して配置換えをした結果、若手従業員の部下につくことになった場合には、若手側が委縮してしまい思うように仕事が出来ないストレスを抱えてしまうかもしれません。各世代の従業員に期待している役割を説明し、年齢に関係なく全員が活躍できる環境を整えていく必要があります。

高年齢者の雇用に関する対応には顧問弁護士をご活用ください

現状、定年廃止を含む65歳以上の高年齢者の就業確保措置は努力義務にとどまっているものの、今後も少子高齢化の進行・年金財政のひっ迫が続くであろう状況からすれば、企業の義務がさらに強化されることも十分想定されます。また、法改正を受け実際に定年廃止に踏み切る企業も、少しずつですが増えています。

こうした時流により変化していく法規制に対応しつつ、それぞれの企業の事情を踏まえたうえで適切な制度設計・運用をしていくには現行の就業規則等を継続的に改善していくことが重要です。

そこで、高年齢者の雇用に関しては労務問題を熟知した顧問弁護士のサポートを受けられることをお勧めします。弁護士法人リブラ共同法律事務所では、労務問題に特化した顧問契約をご用意しております。高年齢者の雇用確保措置に関しては、顧問先企業の就業規則等につき弁護士が最新の法令に適合しているかどうかチェックし、必要に応じて予防法務も兼ねた提案をさせて頂きます。また、弁護士が定期的に顧問先をレビューすることで、大きな紛争となることを未然に防ぎ、経営効率を向上させます。

当事務所の顧問弁護士サービス

高年齢者の雇用に関してご心配・ご不安な点のある札幌市近郊の企業様は、経営者側の労務問題に注力している弁護士法人リブラ共同法律事務所へぜひご相談ください。

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