問題社員対応におけるポイント

はじめに-問題社員の解雇の可否について

問題社員の対応方法として、多くの方がまず「解雇」を思い浮かべると思います。しかし、日本の労働契約法では、簡単には解雇を認めていません。社員を解雇するためには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」という2つの要件が必要となるからです。
さらに、法律上解雇が認められたとしても、解雇した元社員から不当解雇と主張され、裁判で争うことになると、会社は大きな負担を強いられることになります。そのため、問題社員に対して解雇を実施する前には、注意指導や懲戒処分といった段階的な対応をしなければなりません。

①注意指導の実施

まずは、問題社員に対して注意指導をすることが重要です。
問題社員の中には、自分の行動が問題であると認識していない場合があり、問題点を明確かつ適切に伝える必要があります。特に問題の程度が比較的大きい場合は、書面にて注意指導を実施する必要があります。理由としては、後々裁判に発展した場合、会社が既に注意指導を実施してきた証拠となるからです。

特に注意したいポイントは以下の3点です。

・事実を明確に記載すること
・改善を求める内容とすること
・受領欄を設けること

書面での注意指導を実施したにもかかわらず、改善が見られない場合は、始末書や誓約書の提出、配置転換を検討する必要があります。始末書や誓約書に関しては特別な様式は決まっていないため、社内規定のものを事前に作成することをお勧めいたします。
始末書や誓約書の項目としては、問題行動の内容、二度と繰り返さない旨の文言、日時、署名、押印などが記載されていれば最低限の内容として網羅されていると言えます。

②懲戒処分の実施

就業規則で懲戒事由が定めてあり、社員の言動が懲戒事由に当たる場合には、懲戒処分を行うことができます。就業規則に定められる懲戒処分には、一般に、譴責、戒告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがあります。就業規則の条文や裁判例等を踏まえ、適切な処分を選択する必要があります。
ご相談を受ける際によく見受けられる会社側の問題点の一つに、就業規則に処分に関する内容が未記載であることが挙げられます。現時点で問題社員に関するトラブルを抱えていなかったとしても、懲戒処分を実施できる就業規則であるかどうか、確認しておくことをお勧めします。

③退職勧奨を行う

懲戒処分を実施したとしても、問題社員の言動が改善されない場合は、“問題社員に自主的に辞めてもらう”という選択肢を取ることになります。これを退職勧奨と言いますが、退職勧奨を簡潔にまとめると、会社から社員に対して退職するように説得し、合意退職をしてもらう行為を指します。また、事案によっては解決金を提示した上で退職を求めることもあります。

退職勧奨を行う際に、注意すべき事項は主に以下3点です。

・適切な人数で説得を行う
・適切な場所、時間を選ぶ
・発言内容に注意する(感情的な発言は慎む)

例えば、対象者1名に対して必要以上に大人数で面談に臨む、他の従業員がいる前で話をする、何時間にもわたり話をする、等の態様では社員の心理的負担が大きく、後から「自分の意見を話すことが出来なかった」「納得できなかったが応じざるを得なかった」と退職勧奨の違法性を主張される可能性があります。社員の自由な意思決定に基づかない違法な退職勧奨は不法行為として損害賠償(慰謝料請求)を裁判所から命じられる可能性もあるため、注意が必要です。
また協議の際は録音を取るなどして、適切な退職勧奨がなされていたことの証拠を残すことも大切です。

④普通解雇、懲戒解雇を行う

基本的には上記の「注意指導」、「懲戒処分」、「退職勧奨」を必要に応じて行ってから解雇を実施することになります。また、解雇をするためには、正しい手順を踏んで実施することが必要で、主に以下のような手順を取る必要があります。

1,解雇の方針を幹部や本人の直属上司へ共有
2,解雇の理由をまとめた書面を作成
3,解雇通知書を作成
4,解雇する社員の呼び出し
5,社員に解雇を伝達
6,職場内で解雇を発表

さらに、解雇の種類は大きく分類すると3つに分けることができ、労働者に病気や能力不足といった労働契約上の債務不履行があった場合に実施する普通解雇、犯罪行為等の企業秩序に対する著しい違反があった場合に実施する懲戒解雇、会社の経営難などにより社員を減らす場合に実施する整理解雇が挙げられます。これらの解雇に対してそれぞれ正しい手順を踏まずに社員を解雇してしまうと、不当解雇として訴えられることがあります。したがって、問題社員の解雇を検討する際には、必要な準備や進める手順に関して、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

おわりに

社内に問題社員が在籍し続けることは会社にとってリスクを抱えていることと同義といえます。しかし、どのような対応を取ればよいのか、適切な対応が可能な社内体制となっているか、わからないことも多いかと思います。
当事務所では、問題社員に対しどのような対応をとるべきか、アドバイスすることが可能です。判断を誤れば、労働審判や訴訟等の紛争に巻き込まれることがありますので、もし、問題社員への対応について悩まれている場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

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