就業規則に違反した従業員への対応方法とは?確認すべき点を弁護士が解説
就業規則とは、社内の様々なルールを取りまとめたものです。従業員は原則、就業規則に従った行動を取らなければなりません。もし就業規則に違反した場合は、他の従業員や事業への悪影響を防ぐために、懲戒処分を下すことも可能です。ただし、違反したことだけを理由に、一方的な処分を行ってしまうとトラブルの原因になるため、処分を行う手順や法律上の規制を把握しておく必要があります。
そこで今回は、就業規則に違反した従業員に対して、企業側が取るべき対応方法や注意点を解説します。
就業規則に違反した従業員に対して企業側がとるべき対応
始末書の提出を求める
就業規則違反を繰り返している場合や、問題の程度が大きい場合は、まず始末書の提出を求めて謝罪と反省を促します。就業規則違反の程度が軽微である場合は、口頭による指摘程度で済ませることが一般的です。しかし、他の従業員に悪影響が及ぶような事象である場合は、始末書という形で処分を行いましょう。始末書の提出を求める場合は、懲戒処分として提出させるのか否かを明確にしておかなければなりませんが、懲戒事由として就業規則に記載が無いにもかかわらず、懲戒処分として始末書の提出を求めることは違法と判断されることがあるため、注意が必要です。
軽微な懲戒処分を行う
始末書の提出や口頭での指導を行った後に改善が見られなかったとしても、いきなり辞めさせることは避け、軽微な懲戒処分を行うことを推奨します。重い処分を下す前に、軽微な処分を行うことで、改善を促す十分な期間を設けることができるからです。
この段階で行う懲戒処分の例として、以下のようなものがあります。
・戒告
・譴責
・減給
・出勤停止
・降格
実際に上記のような処分が下されることで問題行為に対する意識の改善が見込めるだけでなく、たとえ改善されなかったとしても、企業側は改善を促す適切な措置を取ったという、その後の解雇等のより重い処分を正当化する理由になるというメリットがあります。
退職を促す
就業規則違反を繰り返す従業員を辞めさせようと検討する段階になっても、解雇に進む前に退職勧奨を行います。退職勧奨とは、企業側から従業員に退職を促し、従業員側から退職届を提出してもらう方法です。同意の上で退職届を出す形となるため、訴訟に発展しにくい点が魅力といえます。訴訟に発展すると企業に少なからず負担が生まれるため、企業側の費用や労力の負担を可能な限り減らせるように、訴訟を極力避ける方針を選択することが重要です。解雇に踏み切る前に、本人の同意を得て自ら退職してもらうことを目指しましょう。
懲戒解雇を行う
これまでお伝えした、注意指導、懲戒処分、退職勧奨を行った後も、改善がみられない場合は懲戒解雇に踏み切りましょう。懲戒解雇を行うためには、客観的に見て合理的で正当な理由が必要です。これまでの問題行為に関して、企業側は適切な注意・指導を行ったにもかかわらず改善されなかったことを証明できる資料を準備することが重要です。もし従業員が解雇の無効を主張し訴訟を起こしたとしても企業側の正当性を主張することができます。
企業側の対応を証明する資料には次のようなものが挙げられます。
・責任者がチェックを入れた業務報告書
・指導記録票
・面談内容のメモ
・本人がまとめた改善点の報告書
・注意書や指導書
懲戒解雇は訴訟などのリスクを孕んでいますが、やむを得ないと判断した場合は最終手段として有効な処分です。
就業規則違反の従業員を処分する際の注意点
就業規則の内容が有効であること
就業規則違反の従業員を処分する場合、まずは運用している企業の就業規則が法的に有効であることを確認しなければなりません。そもそも就業規則が法令に違反している場合、その規則を理由として懲戒処分を行うことはできないからです。就業規則の有効性を判断するポイントはいくつもありますが、少なくとも以下のようなことを満たしている必要があります。
・労働基準法や労使協定に違反しているルールはないか
・絶対的必要記載事項は漏れなく記載されているか
・就業規則の作成・変更時、労働代表者から意見を聞き、意見書を作成しているか
・労働基準監督署に届出を行っているか
・労働者全員に周知されているか
就業規則に懲戒処分規定を設けていること
就業規則が有効なものであっても、処分内容を記載した「懲戒規定」が無ければ、就業規則違反をした従業員に処分を下すことはできません。
懲戒規定は、以下のような内容を明記しましょう。
・どのような行為が違反行為・懲戒対象に該当するか
・違反行為に対して、どのような処分(種類と内容)を下すか
懲戒に関する規定がないにもかかわらず、従業員に懲戒処分を下すことは違法です。必ず就業規則に記載された内容を超えた処分をしないように確認する必要があります。
まとめ
就業規則に違反した従業員がいる場合、問題行為の程度によってさまざまな処分方法が考えられます。いずれにしても、懲戒処分を行う場合は、就業規則が法的に有効であり、懲戒規程が明確に定められていなければ処分を実行することはできません。就業規則に違反する従業員への対応では、手順を誤ればパワハラや不当解雇などを訴えられる可能性が高いため、弁護士に客観的かつ専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
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